人に「かくあらねばならない」と思いこましている何者かが。
それは人々の間に入り込み、いつのまにか世界を軋ましている。
霧間誠一
昔々あるところに、豪華な服を着て、
町をパレードするのが好きな王様がいた。
ある日、王様の前に「詐欺師の仕立て屋」が現れた。
仕立て屋はこんな感じのことを言った。
「王様にぴったりの服を用意しました。
これは愚か者には見えず、賢いものだけが見える、
素晴らしい色合いの豪華な服です。
ただし、これほどの珍しい服は他になく、とても高いものですから、
お大臣さまともよくご相談なさってから
ご購入することをお勧めいたしますよ。」
もちろん王様には見えなかったが、
見えないとは口が裂けてもいえない為、
見える振りをして家来に相談した。
「この豪華な服を買おうと思うのだが、いかんせん高い。
そなたらの意見を聞きたい。
この服は高い値段で買うに値するものだろうか?」
もちろん家来たちにも見えなかったが、
見えないとは口が裂けてもいえない為、
見える振りをした。
見えないことを微塵も感じさせなかった。
また見えないと叫ぶ者に対しては
この服を口実に失脚させ、自分がのし上がる手段とした。
「とても素晴らしい服です。
これほどまでに王様にあう服はございません。
いますぐに購入することをおすすめします。
また、○○がその服は見えないと陰で申しておりました。
そのような者は王様の側近としてふさわしくありません。
いますぐに解任することを提案いたします。」
(中略)
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