人は
まっすぐにものを見る眼を持って生まれ
後天的に獲得した斜めに見る眼をもてはやし
いつかまた手放していく
ならば早くに手放した者勝ち
そうすることが難しいこの世ではあるけど
井上雄彦「バガボンド 24巻」
山路(やまみち)を登りながら、こう考えた。
智(ち)に働けば角(かど)が立つ。
情に棹(さお)させば流される。
意地を通せば窮屈だ。
とかくに人の世は住みにくい。
住みにくさが高じると、安い所へ引き越したくなる。
どこへ越しても住みにくいと悟った時、詩が生れて、画(え)が出来る。
人の世を作ったものは神でもなければ鬼でもない。
やはり向う三軒|両隣りにちらちらするただの人である。
ただの人が作った人の世が住みにくいからとて、越す国はあるまい。
あれば人でなしの国へ行くばかりだ。
人でなしの国は人の世よりもなお住みにくかろう。
越す事のならぬ世が住みにくければ、住みにくい所をどれほどか、
寛容(くつろげ)て、束の間の命を、束の間でも住みよくせねばならぬ。
夏目漱石「草枕」
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